夏の出費を、見るのがこわい人へ。
日付を見ると、もう1か月以上前のものです。
金額を確かめる気にならなくて、そのままにしていました。
見なければ、なかったことにできる気がして。
今日は、その「見たくなさ」のほうから、始めてみたいと思います。
01夏が終わると、レシートが増えています
夏は、お金の動きが大きくなる季節です。
帰省の交通費。冷房の電気代。子どもの行事。夏の講習や合宿。人と会う機会が増えれば、そのぶんの出費もあります。
ひとつひとつは、必要なものだったはずです。使ってよかったと思えるものも多かったと思います。
それでも、9月の財布は、なんとなく重い。
この時期、こんな声をよく聞きます。「夏の分を見るのが、こわい」
通帳を開くのを、来週にしている。カードの明細を、通知だけ見て閉じている。家計簿を、8月から止めている。
私も、そういう時期を過ごしたことがあります。
そして、見ないでいる期間が長くなるほど、開けるのがこわくなっていきました。
台所に、レシートを挟んでおくための古いクリップがひとつあります。買い物から帰ると、そこに一枚足していきます。
夏のあいだに、挟まった紙の厚みだけが増えていきました。厚みは分かるのに、中身は分からない。そういう状態のまま、9月になりました。
02不安の正体は、金額ではないかもしれません
ここで、ひとつ考えてみたいことがあります。
私たちが不安なのは、使った金額そのものでしょうか。
実際に開いてみると、思っていたほどではなかった、という経験をされた方は多いのではないかと思います。逆に、思っていたより多かったとしても、開けたあとは、不思議とすこし落ち着きます。
つまり、いちばん重かったのは、開ける前の時間だったということです。
分からない、という状態そのものが、心を消耗させるという考え方があります。
金額が分かれば、対応を考えられます。多ければ削る場所を探しますし、少なければ安心します。どちらにしても、次の一手が決まります。
分からないあいだは、どちらの手も打てません。頭のなかで、いちばん悪い数字を想像しては、打ち消して、また想像する。それを何日も続けることになります。
ですから、家計を見るというのは、我慢の作業ではなくて、想像をやめる作業なのだと思っています。
もうひとつ、見ないでいるあいだに起きていることがあります。
使うたびに、後ろめたさが少しずつ足されていく、ということです。
金額が分かっていれば、「今月はここまで」と線を引けます。分からないと、線が引けません。線がないので、何を買っても、これでよかったのかが分かりません。
その小さな後ろめたさは、レジのたびに積み上がります。夏の終わりの重さは、使った金額そのものより、この積み上がりのほうかもしれません。
03家の土台は、見えないから不安になります
家の話に、たとえさせてください。
家でいちばん大事なのは、たぶん土台です。
けれど土台は、床の下にあって、ふだんは見えません。見えないので、気にせず暮らせます。それは、ありがたいことでもあります。
ただ、一度不安になると、見えないぶん、際限がなくなります。
床がすこし鳴っただけで、大きな問題を想像してしまう。実際に床下を見た人は「湿気がすこし多いですね」で終わるのに、見ていない人は、家全体を心配することになります。
お金も、同じところがあると思います。
数字を見ていないあいだ、不安はいくらでも大きくなります。見た瞬間に、それは「ここが多かった」という具体的な話に変わります。
大きさが分かるものは、扱えます。大きさが分からないものは、扱えません。
床下を見るのは、こわいことではなくて、こわさを終わらせる作業なのだと思います。
それに、床下を見る人は、家を疑っている人ではありません。
長く住むつもりだから、見ます。手入れをして、直しながら使っていくつもりだから、状態を知っておきたいのです。
家計を見るのも、同じ気持ちでいいのだと思います。責めるために見るのではなく、これからも暮らしていくために見る。そう思えると、通帳を開く指が、すこし軽くなります。
見える化は、節約とは違います。減らすために見るのではなく、扱えるようにするために見る。見たあとに何も減らさなくてもかまいません。それでも、見る前と見たあとでは、夜の重さが変わります。
04ひとりで抱えるのは、性格の問題ではありません
お金の話は、人に相談しにくいものです。
金額そのものを見せることになりますし、暮らしぶりの話にもなります。相談する相手を選ぶのも、むずかしいところです。
ですから、ひとりで抱えてしまうのは、あなたが人に頼れない性格だからではありません。話しにくい種類の話だからです。
そのうえで、ひとつだけお伝えしたいことがあります。
ひとりで抱えないというのは、誰かに打ち明けることだけを指すのではない、ということです。
頭のなかだけで持っている状態から、外に出す。それだけでも、抱える量は変わります。
紙に書く。表に入れる。スマートフォンのメモに並べる。相手は人でなくてもかまいません。
頭のなかにあるあいだ、数字は形を変えつづけます。書いたとたん、動かなくなります。動かないものは、見ていられます。
それが、私の考える「ひとりで抱えない」の、いちばん小さい入口です。
05全部を把握しようとしないでください
家計を整えようとして、続かなかった経験のある方は多いと思います。
私もそうでした。理由は、はっきりしています。最初から、全部やろうとするからです。
すべての支出を分類する。費目を細かく分ける。毎日つける。抜けがあると気持ちが悪いので、きれいに埋めようとする。
数日はできます。そして、一度抜けると、戻れなくなります。
庭の手入れと同じで、完璧にやろうとした年ほど、途中で放り出すことになります。
ですから、今日おすすめしたいのは、3つだけ見る、という方法です。
ここで、ひとつ問いを置かせてください。
なんだったでしょうか。
正確な数字でなくてかまいません。だいたいで、じゅうぶんです。
そして、思い出したあとに、その出費を責めないでください。今日の目的は、反省ではなく、把握です。
反省を混ぜると、この作業は続かなくなります。
数字を見るたびに気持ちが沈むなら、人は自然と見なくなります。続けるためには、見ても痛くない形にしておくことが必要です。
ですから、しばらくは「見て、書く」だけにしてください。減らす話は、あとからでも間に合います。
063つだけ書き出す、小さな型
やることは、これだけです。10分あれば終わります。
夏の終わりに、3つだけ書き出す
- この夏、いちばん大きかった出費を1つ書く 金額はだいたいでかまいません
- そのうち「また来年もある」ものに、丸をつける 帰省や行事は、毎年来ます
- 丸をつけたものについて、来年までの月数で割ってみる 1年後なら12で割るだけです
- 割った金額を、毎月の予定に1行だけ書き加える 実際に取り分けなくてもかまいません
- ここで終わりにする ほかの支出は、今日は見ません
3つめが、この型の中心です。
大きな出費は、それが一度に来るから重く感じます。12で割ると、同じ金額が、ずいぶん違う顔をします。
もちろん、割ったからといって、お金が増えるわけではありません。
けれど、来年の夏に同じ出費が来たとき、「また来た」ではなく「知っていた」に変わります。この差は、思っているより大きいのではないかと思います。
この夏、いちばん金額が大きかった出費は、なんだったでしょうか。
1つ書けば、それでじゅうぶんです。全部を並べる必要はありません。いちばん大きいものを1つ扱えるようになると、不安の総量が、はっきり減ります。大きいものから手をつける。庭の手入れと同じ順番です。
07今日の暮らしに、ひとつ整える場所はありますか
玄関のそばに、小さな棚をひとつ置いています。予備の傘や、電池や、雨の日に困りそうなものを入れておく場所です。
使わない月のほうが、ずっと多いです。それでも、置いてあります。
雨の日のための備えというのは、雨を止める道具ではありません。
雨は降ります。備えというのは、降ったときに慌てないでいられる、という状態のことです。
家計についても、同じように考えています。
来年の夏も、出費はあります。それはもう決まっていることです。減らせるものもあるでしょうし、減らせないものもあります。
変えられるのは、金額よりも、来かたのほうです。
不意打ちで来るのか、知っていたものとして来るのか。同じ金額でも、暮らしの重さは変わります。
今日やることは、たった1行です。
夏のレシートを、まだ財布に入れたままにしている方は、それを1枚だけ取り出してみてください。金額を見て、紙に書く。それだけで、今日のぶんの整えは終わりです。
今日の1行が、来年の夏を、すこし軽くしてくれますように。
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