アレルギー検査は異常なし。それでも続く、夏の不調に。

夏の朝、明るい台所で新鮮な野菜や果物を手に、やわらかな光のなかで微笑む女性
夏の夕方。よく冷えた一杯と、少し置いておいたお刺身。
おいしく食べ終えたころ、なんだか腕がかゆい。顔がぽっとほてって、少し頭も重い。

「食あたりかな」と思っても、次の日にはけろっとしている。
毎年この季節になると、そんな「なんとなくの不調」の声が、いくつも届きます。

01「検査は異常なし」と言われたのに

食後、腕や首すじがかゆくなる。顔がぽっと赤くなる。理由の見えない頭痛。風邪でもないのに、鼻がぐずぐずして鼻づまり。お腹がゆるくなったり、張ったり。

こういう不調をまとめて相談して、アレルギー検査を受けても、「特に異常はありませんね」と言われることがあります。

数値の上では、問題ない。でも、体はちゃんと不調を感じている。この「検査は異常なし、でもつらい」というすき間で、静かに戸惑っている方は、決して少なくありません。

やっかいなのは、症状が体のあちこちに、ばらばらに出ることです。頭痛は頭痛。鼻づまりは鼻づまり。お腹はお腹。別々の不調として受け取ってしまうと、じつはひとつの糸でつながっているとは、なかなか気づけないものです。

今日は、その背景にあるかもしれない「ヒスタミン」という物質のお話を、やさしくほどいていきます。

02「ヒスタミン」は、もともと体の味方です

ヒスタミンと聞くと、「アレルギーの悪者」というイメージがあるかもしれません。

でも、ヒスタミンはもともと、私たちの体のなかで大切な役割を持っている物質です。神経のあいだで情報を伝えたり、免疫の働きを調整したり。眠りと目覚めのリズムにも関わっていると考えられています。

問題になるのは、量とバランスです。体のなかでヒスタミンが増えすぎて、うまく片づけきれずに溜まってしまう。すると、かゆみや頭痛、鼻づまり、お腹の不調といった形で、あちこちに顔を出すことがあります。

この「ヒスタミンをうまく分解しきれず、溜まって不調が出る状態」は、「ヒスタミン不耐症(ふたいしょう)」と呼ばれることがあります。アレルギーとは少し違う切り口で、近年、静かに注目されている考え方です。

大事なのは、これが「気のせい」でも「気にしすぎ」でもない、ということです。体のなかで実際に起きている、量とバランスの話として捉えると、なんとなく続く不調にも、少しだけ輪郭が見えてくる気がします。

ひとつの視点

アレルギーは、「特定のものに免疫が過剰に反応する」しくみ。いっぽうヒスタミン不耐症は、「ヒスタミンを片づける力が追いつかない」という、いわば量の問題だと考えられています。一般的なアレルギー検査で異常が出にくいのは、そもそも見ている場所が少し違うから、とも言えそうです。

03夏の食卓に、ヒスタミンは増えやすい

なぜ、この話を夏にするのか。じつは夏は、食べものからヒスタミンを受け取りやすい季節だからです。

ヒスタミンは、食材が時間をおくほど、少しずつ増えていく性質があります。とくに気温が高いと、その進み方は早くなると言われています。

買ってきたお刺身を、常温でしばらく置いてしまう。作り置きのおかずを、数日かけて食べる。冷蔵庫を過信して、少し鮮度の落ちた青魚を焼く。夏場は、こうした場面がぐっと増えます。

さらに、夏に手が伸びるものにも、ヒスタミンが多めの顔ぶれが並びます。よく冷えた発酵飲料、熟成したチーズ、赤ワイン、開けて時間のたったツナ缶。どれも、夏の食卓に登場しやすいものばかりです。

外で飲んだり食べたりする機会も、夏は増えます。冷たいお酒に、作り置きの多いおつまみ。楽しい時間を過ごしたあとで、なんだか体がむずむずする。そんな覚えのある方も、いらっしゃるかもしれません。

「傷んでいるわけでもないのに、なんだか不調」。その裏側に、こうして少しずつ受け取ったヒスタミンが関わっていることも、あるのかもしれません。

POINT

ヒスタミンは、しっかり火を通しても、あまり減らないと言われています。だから「加熱したから大丈夫」と思っていても、すでに増えていた分は、そのまま残っていることがあります。夏は「新鮮なうちに食べきる」ことが、なによりの下ごしらえになります。

04ヒスタミンを片づける「DAO」という門番

ただ、体には、余分なヒスタミンを片づけるしくみが、ちゃんと備わっています。

その中心にいるのが、「DAO(ダオ)」という分解酵素です。ジアミンオキシダーゼという少し長い名前の、体にとっての片づけ役です。おもに小腸の粘膜で働いていて、食べものから入ってきたヒスタミンを、体のなかへ広がる手前で分解してくれると考えられています。

健康な状態では、食事から入ってくるヒスタミンの多くを、このDAOが片づけてくれるとされています。いわば、腸の入り口に立つ「門番」のような存在です。門番がしっかり働いているうちは、少しくらいヒスタミンを受け取っても、体は静かにやり過ごしてくれます。

ところが、この門番の力は、腸の状態にとても左右されやすいと言われています。腸の粘膜が荒れていたり、腸内の菌のバランスが乱れていたりすると、DAOの働きが落ちて、ヒスタミンを片づけきれなくなることがあるのです。

私自身、潰瘍性大腸炎という腸の病気と、長いあいだ付き合ってきました。腸の調子が崩れると、同じものを食べても、体の反応までどこか変わってくる。そのことを、身をもって感じてきました。だから「腸とヒスタミンがつながっている」という話は、私にはとても腑に落ちるのです。

検査では異常が出にくいのに不調が続くとき、腸の状態にそっと目を向けてみる。それは、意外と大事な入り口かもしれません。

05分解を助けてくれる、3つの栄養素

DAOという門番が元気に働くためには、いくつかの栄養素が関わっているとされています。

よく名前があがるのが、ビタミンB6、銅(どう)、そしてビタミンCです。これらは、ヒスタミンを分解する働きを、体の内側から支えていると考えられています。

どれも、特別なサプリメントを買い足さなくても、日々の食事からこつこつ受け取れる栄養素です。

たとえば、ビタミンB6はバナナやさつまいも、鶏むね肉に。銅はナッツやごま、大豆製品に。ビタミンCはパプリカやブロッコリー、キウイに、比較的多く含まれています。

「これを食べれば大丈夫」という魔法の食材があるわけではありません。でも、こうした栄養素をいろどりよく取り入れておくことは、体の土台を静かに支えてくれると考えられています。

ちなみに、同じものを食べても平気な人と、不調が出る人がいます。それは、生まれ持った体質や、そのときの腸の調子によって、ヒスタミンを片づける力に個人差があるからだと考えられています。だれかの「大丈夫」が、そのまま自分の「大丈夫」とはかぎらない。だからこそ、自分の体の声に、耳をすませる意味があるのだと思います。

SHITSUMON

今日のあなたの食卓は、
「ためこむ」側でしょうか。
それとも「片づける」側でしょうか。

06食卓でできる、ためこまない工夫

では、ここまでの話を、毎日の食卓に落とし込んでみます。むずかしいことはありません。小さな工夫の積み重ねが、いちばん確かな味方になってくれます。

ヒスタミンをためこまないための、食の工夫

  • 魚介は「鮮度」が何より。買ったその日に食べるか、すぐ小分けにして冷凍を
  • 作り置きや常温での置きっぱなしは、ほどほどに(時間がたつほどヒスタミンは増えやすいとされます)
  • 発酵食品・熟成チーズ・赤ワインは「少なめに、体の様子を見ながら」
  • 分解を支える栄養素を、いろどりで:パプリカ・ブロッコリー・キウイ(ビタミンC)
  • バナナ・さつまいも・鶏むね肉(ビタミンB6)/ナッツ・ごま・大豆製品(銅)
  • 腸をいたわる:野菜・海藻・きのこの食物繊維で、腸内環境をゆっくり整える

ポイントは、「がまん」ではなく「選び方と鮮度」です。好きなものを一生食べない、という話ではありません。

そしてもうひとつ。よく冷えたものばかりでお腹を冷やすと、肝心の腸まで疲れてしまいます。冷たいものと温かいものを、半分ずつ。そのくらいのゆるさが、夏はちょうどいいのかもしれません。

もし食材を余らせがちなら、「少しずつ、こまめに買う」ほうが、夏は体にやさしいかもしれません。冷蔵庫にため込むより、食べる分だけを、なるべく新鮮なうちに。それだけでも、受け取るヒスタミンの量は、ずいぶん変わってくると考えられています。

もうひとつ。「体調メモ」を、そっとつけてみる

どんな食事のあとに、どんな不調が出やすいか。それは、人によってずいぶん違います。

食べたものと、その日の体調を、スマホのメモに一行だけ残しておく。それを何日か続けると、「自分にとってのくせ」が、うっすら見えてくることがあります。

自分の体の傾向を知ることは、どんな情報よりも確かな、あなただけの地図になります。

07続くときは、ひとりで抱えないで

最後に、いちばん大切なことをお伝えします。

ここまでのお話は、あくまで暮らしのなかのヒントです。食卓の工夫で体が少し楽になることはあっても、つらい症状を我慢するためのものではありません。

かゆみや頭痛、鼻づまり、お腹の不調が長く続くとき。だんだん強くなっていくと感じるとき。息苦しさや動悸をともなうとき。そういうときは、どうか自己判断せず、医療機関で相談してください。

「検査では異常なし」と言われた経験があると、また病院に足を向けるのを、ためらってしまうかもしれません。でも、体の声を、軽く見なくていいのです。

もし、少しずつ書きとめた「体調メモ」があれば、それは診てもらうときの、心強い手がかりになります。「いつ・何を食べたあとに・どんな症状が出たか」。あなたが残した何行かが、専門家と一緒に原因をたどる、たしかな地図になってくれることもあります。

夏の夕暮れ、涼しくなった時間に木陰の道を静かに歩く女性の後ろ姿

自分の不調に、そっと名前をつけてあげる。そして、必要なときには専門家の手を借りる。それは、自分をていねいに扱う、ということでもあると思うのです。

「なんとなく不調」のまま、ひとりで抱え込まなくていいのです。原因の見えない不快感には、たいてい、ちゃんと理由があります。その理由に、少しずつ光をあてていく。今日の食卓の小さな工夫は、その第一歩になってくれるはずです。

夏は、食べものと体の距離が、少しだけ近くなる季節。
「なんとなくの不調」を、そっと聞いてあげられる自分でいたいなと思います。
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カキノキ カズタカ
分子栄養カウンセラー / ステラライフ Health Compass
本記事は、分子栄養学および健康に関する一般的な知識を、暮らしのヒントとしてお伝えするものです。特定の病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。かゆみ・頭痛・鼻づまり・腹部の不調などが続くとき、あるいは強くなっていくと感じるときは、自己判断せず、必ず医師の診察を受けてください。食事の工夫やサプリメントを試される場合も、現在通院中の方や妊娠中の方、お薬を服用中の方は、必ずかかりつけの専門家にご相談ください。